2010年 06月 05日

影の反オペラ2 詩人

「納戸の夢ーあるいは夢のもつれー」は
時里二郎さんにお願いして書いていただいた、音楽と一緒になることを前提として
書かれた言葉だ。

時里さんは関西にお住まいの詩人。これまでに
「星痕を巡る七つの異文」(1991書肆山田)
「ジパング」(1995思潮社)
「翅の伝記」(2003書肆山田)など出版されている。
その作品は「詩」というより「譚」という言葉を使って表現される。
反オペラ「納戸〜」は、時里さんの描く静かな世界に惹かれてはじまった、
夢のはなし。

コンサート前半に演奏される、ショスタコーヴィチの歌曲集
「マリーナ・ツヴェターエヴァの6つの詩」は高橋悠治さんの選曲です。
この歌曲集は原語のロシア語ではなく、悠治さんによって訳された
日本語で歌います。

公演まであと6週間あまり。
もはや、昼も夜も「夢」三昧です。

# by hatano-mutsumi | 2010-06-05 23:55 | コンサート
2010年 05月 30日

禁句3種

当てる・鳴らす・響かす

発声する上での禁止指定事項。私にとってはこの3つ。
「ねらう」「あつめる」 これらもまた危険区域だ。

声楽のレッスンでは「当てて」「鳴らして」「響かせて」という指示の単語は
一般的だが、私には言うのも言われるのも心地良い言葉ではない。
初めての生徒さんのレッスンではまず、この3つを意識することを
「やめてみましょう」と伝える。
すると大抵面食らった顔をされるので
「当たった・鳴った・響いた という“結果”はもちろん歓迎!」と説明する。

当てよう・鳴らそう・響かそうとする意識は“りきみ”を生むと思うからだ。
だが体のどの部分に力みが生じるかは、人によって違うだろうし、
こういった単語で発声をイメージしても全く力まない人もいるだろう。
私は、力みます。特に後頭部、首の後ろ、あご etc・・・。
「あぶない」と感じてしまう理由はもうひとつ。
その意識によって成功した場合、鳴ってるな・響いてるなという快感のアンテナが
歌っている間ずっと心身の内側に向いてしまいそうだから。
力んで生まれた音は大きな音量になることはあっても、
空間を狭く、開放されないものにしてしまう。

禁止!と思わなければまずい、というのは
それだけ私は捕まりやすいということですね。
書いてて気づく。

良い歌声を定義するのは不可能だが、あえて言うなら
「通りのよい声」というのが、今は一番近い表現だ。
空間をよく通る声、というだけではない。
「体を通りぬけている声」だ。
首から上だけ・胸から上だけでは「通り抜ける」にはならない。
足の下の地面から体を通って空気に還っていく。
なにが? 通っていくのか?
息 なのですが、この話はまた。

# by hatano-mutsumi | 2010-05-30 14:00 | エッセイ
2010年 05月 23日

影の反オペラ1

“語り”と“歌”を行ったり来たりするようなモノオペラを
と高橋悠治さんに依頼したことから「影の反オペラ」は始まった。
去年の夏のことだ。
作曲を委嘱するなど初めての経験。
オペラのための詞が出来上がってきてから数ヶ月、約束どおりの4月末に
とうとう楽譜がきた。

それからというもの、暇さえあれば「譜読み」です。
早くやり終えなければと思いつつ、なんだか勿体ないような気もして、すすめない。
そもそも私の譜読み能力は「牛車」の速度である。
音を体に入れる作業には、とてつもなく時間がかかってしまう。
「365歩のマーチ」ともいえます。
3歩進んで、2歩下がる。

譜読みしていて、特に今回思うこと。
高橋悠治さんの音は「しずく」か「珠」のようだ。
現在の譜読み作業はそれらを
一粒づつ追うような、手に受けるような感覚だ。

その珠はどんな連なりになっていくのだろう。
しずくは溶け合って川になるのか 弾けて飛沫になるのか
どんな運動が起こっていくのか。
なにか知らない生物の静かな細胞分裂を見つめているような毎日。

公演情報 http://www.suigyu.com/monoopera.html

# by hatano-mutsumi | 2010-05-23 01:00 | コンサート
2010年 05月 14日

境目の声

うたうこと と しゃべること 
ヒトがどちらを先にやったかといえば、うたの方らしい。
楽器の中でもっとも原始的なもののひとつは、物を叩く“太鼓”ときく。
物を叩きながら抑揚のついた声を出す“うた”の方が、“しゃべる”より先だった
だろうことは想像できる。
ある時読んだ新聞記事に「類人猿と人類の運命を大きく分けたのは、口の中のある
器官の発達だった」とあった。
(スクラップという良い癖を持たないので、うろ覚えです)
このある器官の発達によって人類は、様々な母音と子音を発することが可能になり
結果、種々の言葉が生まれ、文字、印刷を通して文明を形成していった
とのこと。
この記事を読んで思った。
人には発音できる器官、機能が備わっておりしかも“うたう”という作業は原初的な
喜びであるはずなのに、なぜ声楽の道に入ると、そのどちらも侵蝕されがちになるの
だろう?

15才で声楽をはじめてすぐに感じたことは「歌っていて言葉が普通に言えないと
気持ちよくない」だった。自分が歌うにしろ、他人の歌を聞くにしろ、歌声がなんと
発音されているかわからないとストレスを感じたのだ。
以来、言葉を発音することと歌うことの関係を延々と考えている。
どうやったら しゃべるように歌えるのか?
しゃべりとうた この2つの境目はどこか?
しゃべっていたものが歌となる瞬間はいつか?
境目はあるのか?

「しゃべりとうた」の境目を行き来してみたい。
その思いが高じて、高橋悠治さんにモノオペラの作曲をお願いしました。
言葉は、詩人の時里二郎さん。

上演は東京にて、7月です。これについてはまたすぐに!

# by hatano-mutsumi | 2010-05-14 13:30 | エッセイ
2010年 05月 14日

ソリチュード  パーセル歌曲集

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2010年1月に自主レーベルをたちあげました。
Sonnet ソネット というレーベル名は「14行詩」という詩の形式の名前ですが
この言葉の元々の意味のひとつである
「小さな曲」
をイメージしています。
音楽も演奏するユニットも、大きなものより小さなものが好みの歌手が
作るレーベルです。
自分の体の大きさに反比例の好みといえます。

信頼する演奏家たちの助けを得て録音することができたパーセル歌曲集。
ゆったりと聞いていただければ幸いです。          
                                 

波多野睦美  メゾ・ソプラノ
芝崎久美子  ハープシコード
市瀬礼子   バス・ヴァイオル
つのだたかし リュート, バロックギター



曲目リスト

  • 恋していると彼女はもう告白する She loves and she confesses too

  • 音楽が愛の食べ物なら If music be the food of love

  • 孤独 O solitude

  • 雀と優しいキジ鳩 The sparrow and the gentle dove

  • エジンバラの街から遠く 'Twas within a furlong of Edinboro town

  • いとしいすてきなあなた Dear pretty youth

  • ばらよりも甘い Sweeter than roses

  • グラウンド Ground

  • 連れて行ってください O lead me

  • なんてすてき Ah! how sweet

  • 僕よりも幸せなものは There's not a swain

  • いとしいアストレアから Since from my dear

  • 恋の病から I attempt from love's sickness

  • 妖精と羊飼い Nymphs and shepherds

  • 恋が甘いものなら If love's a sweet passion

  • ひとときの音楽 Music for a while 全16曲


HMVで購入

# by hatano-mutsumi | 2010-05-14 13:00