<   2011年 01月 ( 2 )   > この月の画像一覧


2011年 01月 24日

マッド・ソング

狂気の女性といえば、現代では
オペラは「ルチア」芝居は「オフィーリア」
バロック時代のイギリスでは「ベス」がその代表の名前だった。
男の場合は「トム」。

パーセルの時代「マッド・ソングー狂気の歌」というジャンルの歌が人気を博した。
その原因は色々あげることができるようだが、
現在もパーセル作品を演奏する歌手に「マッド・ソング」は人気だ。
舞台にのせたがる人が多い。
自分もです。罠の多い曲と知りつつ。

「ベドラムのベス」はパーセルのマッド・ソングの中でもっとも頻繁に演奏される。
ベドラムとは当時ロンドン郊外にあった精神病院の名前だが、
病院とは名ばかりの場所だった。
ここを観光する“馬車ツアー”まであったいう。
「ベドラムの」とつけば「狂気の」と同じことを意味した。

パーセルの「ベス」はこんなナレーションで始まる。

 静かな影の中から 恋の病を治しに ぼろを着たベスがやってくる

音楽のスタイルは数十秒ごとにめまぐるしく変わっていく。
ダンスのようかと思えば、
メランコリックな旋律があらわれ、
火が付いたように早口でまくしたてる語りの直後、
魔女の呼び声が響きわたる。

くるくると変化する歌を歌っているのは誰か?ベスか?ほかの誰かか?

誰でもあり、誰でもない。
 
 この世のすべての法から自由 ワラにくるまって 王様のように輝かしい

こう深い憧憬を抱かせる歌の主人公ってあまりいない。
「ソリチュード」公演で「ベス」歌います。

      *コンサートの詳細はダウランド・アンド・カンパ二イのHPでどうぞ←

by hatano-mutsumi | 2011-01-24 23:08 | コンサート
2011年 01月 07日

2011

明けましておめでとうございます
2011年が皆さまにとって素晴らしい年となりますように!

どんなお正月をお過ごしでしたか?
年頭ともなると
「今年はどんな生活になるかな」「こういう事を生活に取り入れてみようか」
など思いを馳せたりいたします。

生活の中の改めたい様々もさることながら、
お正月からパーセルの事を考えていました。

17世紀に人生を送ったパーセルはどういう生活をしていたのか??
その姿は現在周囲にいる「超多忙」の人々の日常と重なります。
演奏し、作曲・編曲し、学校で教え、プロジェクトを企画し、人の面倒を見る・・・etc。

パーセルは20歳頃からロンドンの主要な音楽ポストを歴任し始めました。
その働きぶりはすごかった。
王室の行事があれば作曲・演奏し、教会でオルガンを弾き、聖歌隊で歌い、
そしてロンドン市民の愛好する芝居のための音楽を作り、リハーサルし、公演し・・etc。
ポストを歴任していたということは、その才能の証明であるとともに
いっぱい働かないと食べていけないくらいに、王室その他からの払いが渋かった
という事実があるようです。
その頃のイギリスはいわゆる「戦後の復興期」に近く、
世の中は開放的になり勢いがあるけれど、国庫にお金はまったくない、という状況。
パーセルの残した手紙に「お願いですから支払いしてください!」と頼んでいるものがあります。

10代から働いて働いて、30代半ばまで一気に駆け抜けた男は、
では、仕事ばかりして 生活や人生を楽しむ暇はなかったか?

相当に楽しんでいたと感じます。
彼の曲を歌うたびにそう思う。
常に「現場」の活気を感じるからです。

「ソリチュード」ツアー・プログラムは全曲パーセルの歌です。
パーセルの生活感・生命力に会いに、どうぞいらしてください。

*コンサートの詳細は ダウランドアンドカンパニイのHPで←

by hatano-mutsumi | 2011-01-07 13:58 | エッセイ