2013年 09月 16日

舌先1寸

BS-TBS の番組「LIFE〜世界と踊る」でナレーションを始めてから
子音の発音に関していよいよ敏感にならざるを得なくなった。

コンサートホールで歌う際(つまり生音)の発音は、
いかにクリアであるか、言葉として客席に届けられるかがポイントだ。
クリアでない悪い発音は観客に聞こえない。
対して、マイクを通して発音するナレーションでは、
子音のありようが良くも悪くも「拡大」されてしまう。
発音だけでなく、声帯の状態も。

風邪をひいてノドが腫れていようが、咳がゴホゴホであろうが、鼻声であろうが
ステージで生音で歌うなら、声の核の部分をホール内に通せばいい。
声の芯が存在すれば、その他の部分はある意味「遠目」になってくれるわけだが、
逆にマイクを通してのナレーションでは、ハイヴィジョン画面と同じく
声の「肌理」の状態があばきだされる。
ひどい風邪ひきで演奏もしくは録音した修羅場は何度もくぐったが、
ナレーションでは経験なし・・・。うーん。嫌だろうなあ。
ノドの状態が悪い時はただでさえ落ち込むのに、
その自分の声をヘッドフォンで聞きながら、という作業は・・・きついだろうなあ。

アンサンブル・サモスココスは、日本語の詩を歌うことを
ひとつの柱としていく。
現在の練習では、ワークショップ形式で色んなメニューをこなしているところだ。
先月からは日本語の子音をメインにして行っているが、メンバーみな
苦手な発音ほど、口の中のどの部分を働かせてその発音を作っているかわかっていない。
サ行とタ行が鬼門の人が多いようだ。
「口のどこで発音されるか?」と問うと
「舌先と、歯の付け根」という答えが返るが、
それは多くの子音で用いられる共通部分。
舌のごくわずかな動きの違いで音は変化する。
音の変化が、言葉を紡いで行く。

来月歌う永瀬清子さんの詩は、色っぽいのだ。
彼女が80歳の時の作品らしい。
淡く、深い、艶っぽさ。
高橋悠治さんの音楽は、詩人自身がつぶやているかのようだ。
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<風ぐるま2013>

10月5日 大阪 14/19時開演
   6日 東京 17時開演
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by hatano-mutsumi | 2013-09-16 12:53 | コンサート


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